人から褒められても素直に喜べない。小さな失敗をいつまでも引きずり、「自分はダメだ」と責めてしまう。SNSや職場で周囲と自分を比べて落ち込んでしまう。そんな自分を変えたいと思っても、どうすればいいのかわからないことがあります。
自己肯定感の低さは、単に性格や気持ちの持ち方だけの問題ではありません。自分自身への見方は、これまでの経験や人との関係、置かれてきた環境の影響を受けながら形づくられていきます。無理に自信をつけようとするよりも、なぜ自分を否定的に捉えてしまうのかを知ることが、変化への出発点になるかもしれません。
この記事では、自己肯定感が低い状態の特徴や原因、人間関係への影響、自分との向き合い方、専門家に相談する目安について、臨床心理士・公認心理師の川上義之先生にお話を伺いました。自分自身を少し違った視点から見つめるきっかけになれば幸いです。
1 Q. 自己肯定感が低いとは、どのような状態を指す?
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自己肯定感が低いとは、どのような状態を指すのですか?
川上 義之先生 自己肯定感が低い状態とは「自分はこのままでいい」と感じにくい状態です。学業や仕事で成果を挙げてもまだ不十分だと感じられたり、周囲が自分を評価していても素直に受け取れなかったりします。また、うまくいかない時には自分に価値がないように感じられることもあります。自分を支える土台が揺らいでしまっているために自己評価が不安定で、成果や他者評価が積みあがることなく崩れてしまうイメージを持ってもらうといいかもしれません。
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自分を責めやすい、褒められても素直に受け取れないといった傾向は、自己肯定感の低さと関係がありますか?
川上 義之先生 関係していることが多いです。ただ、一方的にというよりは相互に影響していることが多い印象を受けます。自己肯定感が低いと自分に責任があると考えやすく、それが自責感につながることはよくありますし、人から褒められても本当に自分を評価しているわけではなく、励ましや慰めとして感じられやすいことがあります。相手を疑っているからというわけでなく、自分を否定的に捉える傾向が強いからと言えるでしょう。
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大人になってからでも、自己肯定感は変えられるものですか?
川上 義之先生 少しずつでも変化していくものです。自己評価は人との関わりや環境の中で形作られ次第に定着していくものです。また、一度定着したら変化しないわけでなく、人が生きている限り少しずつ変化していきます。変わらないとすれば、それは繰り返し自分を否定的に捉えるイメージを強めてしまっているためだと考えられます。自分を否定する気持ちがどこからきているのかを見直し、それとは違う関わりを続けていくことで少しずつ自己肯定感は変化していきます。
2 Q. 自己肯定感が低くなるのは、何が原因?
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幼少期に比べられたり否定されたりした経験は、大人になってからの自己評価にどう影響しますか?
川上 義之先生 子どもは身近な人との関わりの中で「自分がどんな存在であるか」を学んでいきます。比較され否定される経験は自分がそういう存在であると決めつけられる経験になると同時に、そうではないと感じる自分を否定される経験にもなります。そうした経験が続けば、自分は他者から認められないという感覚が強くなり、大人になってからも自分を低く見積もる傾向が強くなってしまいます。
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一度の失敗から「自分はダメだ」と感じ続けてしまうのは、なぜですか?
川上 義之先生 成功や失敗は本来その出来事がうまくいったかどうかという一回性の視点から判断されるものですが、失敗という事象が自己の否定的イメージと結びつくと、失敗が自己の無価値感を証明しているように感じられてしまいます。「自分はダメだ」と感じてしまう人にとっては、単に一度の失敗が起こったという経験ではなく、過去から積み重なる自己否定の材料のひとつになってしまっているためだと考えられます。
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完璧主義や「こうあるべき」という考え方は、自己肯定感の低さとどうつながっていますか?
川上 義之先生 完璧主義や「こうあるべき」という考え方の背景には自己価値に関する不安や恐れが存在することがあります。あるべき自分を達成しようとすることは不安や恐れへの対処なのですが、一度達成できたとしても不安や恐れが消えず、そうすると達成すべき水準は上がっていき、以前は満足いく出来であったものが出来て当たり前になります。目標水準が上がれば達成は困難になり、未達成が続けば自分を肯定的に捉えることができなくなっていきます。

3 Q. 人間関係で苦しくなるのは、自己肯定感の低さのせい?
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嫌われるのが怖くて本音を言えず、相手との間に壁を作ってしまうのはなぜですか?
川上 義之先生 他者から自分が肯定的に受け止めてもらえることをイメージすることが難しく、本音を言えば「嫌われるはず」「受け入れてもらえないだろう」という思い込みが前提になってしまっているためです。本音を言わない限り嫌われることはないと考えたとしても、本音を隠しながら人と関わり続けることはそれだけでも苦しいですし、不意に本音が出てしまうかもという怖さも常にあるかもしれません。そうした苦しさ、しんどさから次第に人と距離を置いてしまうことがあります。
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SNSや職場で人と比べて落ち込むのをやめられないとき、どう考えればよいですか?
川上 義之先生 人と自分を比べることは、たとえば自分を相対的に評価することにつながるので必ずしも悪いことではありません。ただ、落ち込んでしまうとすれば、良いか悪いかという基準だけで判断してしまっているのかもしれません。そういう時は自分の中に払拭したい不安があることがあります。比較を止めることもひとつですが、自分が今どんな不安を抱えて比較をしているのかを考えてみることもひとつです。
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自分の性格ではなく、否定され続ける環境のほうに問題があるケースもありますか?
川上 義之先生 上でも触れたように、「自分がどんな存在なのか」を形作ることに環境は大きく影響します。環境が全てを決めるわけではありませんが、問題のある環境に置かれ続ければ、肯定的な自己イメージを持つことができないといった問題が起こってくるものです。「自分に問題がある」という感覚が強い時ほど環境に目を向けることが重要です。環境の中の自分を意識することで自分に対する見方が少し変わるかもしれません。

4 Q. 自己肯定感が低いと感じるとき、自分でできることは?
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自己肯定感が低いと感じるとき、自分でできることはありますか?
川上 義之先生 まずは自分を責める気持ちがあるかどうか、自分の責任を過度に重く捉えていないか見つめてみることから始めてみるといいと思います。ただ、そうした気持ちに気づいたとしても無理にそれを変えようとすることはありません。自分に対する評価や判断を一旦置いておいて、「そういう自分がいる」ということをただ認めること、それが変化への出発点になることがあります。
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自分を責めている考えに気づいたとき、書き出すことにはどのような意味がありますか?
川上 義之先生 自分を責める考えと自分自身が結びついている場合、その考えと自分自身を分けて捉えることが難しくなります。文字として自分の考えを書き出すことは考えを客観的に眺めることになりますし、「自分を責める考えがあること」と「自分が悪いこと」は別であるという気づきにつながっていくこともあります。また、自分を責める言葉が実は人から言われた言葉だったと気づくこともあります。
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小さな成功体験を積めば自己肯定感も上がるのでしょうか、それとも「自信」とは別のものですか?
川上 義之先生 成功は自己肯定感を高めるかもしれませんが、正確には「自信」と「自己肯定感」は違うものです。自信は自分に何が出来るかという信念なので、出来ないことが続けば揺らいでいきます。自己肯定感はありのままの自分で大丈夫という感覚であり、出来ないことが続いたからといって必ず揺らぐとは限りません。両者が関連しないわけではありませんが、「自分に何が出来るか」と「自分に価値がある」はそれぞれ独立した感覚、信念です。

5 Q. 自己肯定感の低さは、専門家に相談したほうがよい?
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強い自己否定が長く続くとき、うつや不安など別の不調が背景にある可能性はありますか?
川上 義之先生 どちらが先かというのは難しい問題ですが、自己否定的な思考はうつや不安の状態として現れることがあります。反対に自己否定的な思考の結果としてうつや不安の状態になってしまうこともありますが、いずれにしても自分の傾向とそうした症状が重なっている状態では更に否定的な方向に思考が偏りやすくなります。そのため自分の性格的な問題としてだけ考えるのではなく、症状として考えることも必要です。特に消えてしまいたいという思いが強い時には早めに医療機関へご相談ください。
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どのような状態が続いたら、カウンセリングや医療機関への相談を考えるとよいですか?
川上 義之先生 日常生活に支障が出ているかどうかが目安のひとつになります。仕事や家事が手につかない、それまで楽しんでいたことが楽しいと思えない、人と会う気力が湧かないなどはケアが必要な状態になっていると言えます。判断が難しいのは中間にある時です。苦労はするけれどなんとかこなせているような時は「まだ大丈夫」と考えがちです。大変な状況で一時的に状態が悪くなっているだけであれば、状況を乗り切ることで状態は戻っていくことが多いですが、一時的でなく継続的な悪化の場合は状況が変わっても状態は悪くなる一方になってしまいます。一人で考えて迷ってしまった時には人から意見をもらうことも大事になります。
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自己肯定感の低さで相談した場合、カウンセリングでは実際に何が行われますか?
川上 義之先生 カウンセリングで行われることはどんな方向でやっていくかによって違いがありますが、筆者の相談室では、困りごとやこれまでの経緯について伺った上で、否定的な感情や考えがどんな経験の中から生じたのか、人との関係や環境とどのように影響し合っているのかなどを一緒に考えていきます。自己肯定感の低さと人間関係が関係している場合、カウンセラーとの間でも似た状況が現れることが多いのですが、カウンセリングの中のやりとりを通して今までとは違った関係の持ち方や自他の見方を模索していくというやり方を行うことが多いです。

まとめ

自己肯定感が低いことはつらいことではありますが、自己認識は人との関係や環境の中で形作られるものであり、性格的な欠点ではなく、ある意味では環境に適応しようとした結果です。高くしようとすると叩かれてしまうとすれば、低いままでいようとすることは身を守るために当然のことです。
問題は状況が変わってなお自己肯定感が低い状態が続いてしまうことですが、これは昔からのものの見方・考え方がしみついてしまい、変えられないように感じてしまうためです。でも、少しずつかもしれませんが、見方・考え方は変えられるものですし、
まずは「自分を肯定できない自分がいる」、良い悪いではなく、
そういう自分がいることを認めてあげることから始めてみるといいかもしれません。